学籍番号Xの謎(モジュラス11)。

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大学に入学して間もない頃。語学(英語)の講義中、教授が言った。

「この中で学籍番号にXのついている者はいるか」と。

40人ほどのクラスで何人か手を上げたが、私もその一人だった。

「君たちは、成績で入学したのではない。大学が無作為に合格させた人たちで、社会人になって追跡調査される」

そうだったのか。
受験のちょうど1ヶ月半前、大晦日の模試が合格可能性D(志望校検討の要あり)にも関わらず、合格した理由。「サンプルで入学させるなんてあり得ない」と思いながら、難易度の低い大学に落ち、「記念受験校」に正規合格した事実が受け入れ難く、教師の言葉に得心してしまう自分がいた。

入学時に付与される学籍番号は、確かに謎だった。末尾がXの人はほとんどいない。8桁のうち明確にわかるのは、西暦で表示された入学年と学部番号であり、その後に続く数字は不明であった。成績順だと言う者もあり、恣意的な「何か」が反映していると言う人もいた。もちろん、大学側はどういう数字なのか公開していない。

当時、教師ですらこんな無責任きわまりないことを放言しているぐらいで、まして学生の間では学籍番号についての噂は様々な尾ひれがつき一人歩きしていたのだった。

ある日、同じ語学のクラスの人間と「本当にXはサンプルなのか」という話をしていたとき、その男は無言でノートに数字を書きはじめた。

〇×9 入学年
〇×8 入学年
1×7 学部番号(1文学部2経済学部‥)
0×6
3×5
6×4
7×3
X
合計155÷11余り1

11-1=10
10→X


学籍番号に順に9から3の数をかけ、合計を11で割る。余りを11から引いた数が、学籍番号の末尾なのだと言う。10をXとしているから、10人に1人はXの人間がいることになる。

彼はその後、自分の学籍番号も同じように計算し、末尾が計算通りになることを証明して、春風のように立ち去った。

この末尾が、「チェックデジット」であると知ったのは、ずいぶん後の事である。

マイナンバーも、運転免許証番号も、クレジットカードも、ISBN番号も、途中入力のミスを確認するために、チェックのための桁が付加されている。これは秘密でも何でもない。

他の学籍番号を見れば、末尾は1から9までの数字の他にXしかないから、この数は11の余りではないのかという予想はつく。ウエイトが何かは、何度かやってみれば分かる簡単な理屈だった。情報処理の勉強をするまでもなく、彼は自分で計算方法を見つけたのだろう。

ボクが大学を卒業して数年後、学籍番号は学部を表す数字と入学年が入れ替わり、チェックデジットの計算にも変更があった。11で割った剰余がそのまま末尾番号となり、余り10は0と表示される。すなわち、学籍番号にXがついている学生は、もういない。英語教師が学生をかつぐネタも、無くなってしまったのだ。




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by bunkasaba | 2017-02-05 16:10 | 生活 | Trackback | Comments(0)

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