勝馬投票券を買う。


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「馬が期待を裏切るというのは、日曜日の雨同様ありきたりのことなのだ。」(「利腕」ディック・フランシス))

帰省して、馬刺を食べながら考えた。

この世でもっとも美しい動物は「馬」ではないのだろうかと。玉のように輝く目。光るたてがみ。細くしなやかな足。中でもひときわ美しい馬は、高原の牧場ではなく、にごった目のオヤジがひしめく「競馬場」にいる。

× × ×

12月24日午後3時。テレビの前に座りNHKをつけた。
中山第11レース、いわゆる「有馬記念」を見るためである。競馬場では10万人の大歓声が上がり、このレースだけで442億円もの売り上げがあったという。

主なG Iレースは毎年見ているし、ときにはラジオ日経で実況中継を聞きさえした。それなのに、生まれてからただの一度も馬券を買ったことが無い。

競馬場やWINSに行くのも面倒なので、JRAのホームページから、ネットで投票できる「即PAT」の登録を行ってみた。既に都市銀行のインターネット口座があれば、登録は簡単で、コーヒーも沸かないうちに完了し、すぐ馬券が買えるようになった。
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銀行口座と連携しているから、入金出金はすぐできる。特筆すべきはその処理速度の速さで、入金指示をすると、金額が即座に反映される。京都でも中山でも、競馬が開催していれば「勝馬投票券」がすぐ買える。的中すれば、画面に表示され、ただちに払い戻しされる。すべてがスマートフォンで完結してしまうのだ。
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敷居の低さに拍子抜けする一方で、「家族からの申告でネットの馬券販売を制限できる」と報じるニュースをその翌日に見た。たしかにこの簡便さは、底恐ろしい。きっと、預金がゼロになるまで賭け続ける人が続出しているに違いない。

まるで「銀行口座」と言う名のバスタブの底に、穴が空いてしまったような気さえする。お金が漏れ行く先は、日本中央競馬会である。もしかしたら、私は地獄への一本道に足を踏み入れてしまったのかもしれない。

× × ×

馬券購入の体制が整ったので、昼過ぎに日経新聞の予想を見て、3連単・3連複を中心に馬券を購入した。解説や細かい馬の情報は無いが、日経のスポーツ欄には、競馬の予想が◎○△×形式で掲載されている。理由は知らないが、日経には競馬の専任記者がいる。一部の投資や投機は、射幸心をあおるという意味ではギャンブルと同列だからだろうか。

肝心のレースは、スタートから2分35秒で16頭のサラブレッドが2500メートルを駆け抜け、終了してしまった。

第四コーナーを回る手前までは予想通りの展開だったが、最後の1ハロンで予想外の馬が2着になだれ込んだ。瞬間、私の勝馬投票券は負馬投票券と成り果てた。名前だけで買った「シャケトラ」はホームストレッチ前までは良かったのだが6位に沈んだのだった。

× × ×

100円でも失ったお金を取り戻したいという気持ちと、1,000,000円などという高額の支払金額をみては「穴馬を当てて大金を手にしたい」と思う気持ち。この2つがからまりあって、確率のことなど忘れて更にお金を投じたくなってしまう。

「ギャンブルはだめ」と禁止することは簡単だが、何故だめなのかは、きちんと教えられたことがない。また、公営ギャンブルがなぜ存在するのか、賭け麻雀はなぜ違法なのか子供に聞かれても理路整然と説明することはできない。さらに電子決済の普及で、「お金は使えば無くなる」といった当たり前の道理はますます実感しにくくなっている。ネットの普及で、誰が見聞きしたかわからない不確かな情報を、無批判に受け入れる風潮も蔓延中だ。そんな中、ギャンブルと名乗らず、巧妙に粉飾した射幸性の高いものが、身の回りに存在する。知らぬ間に、お金が消えて無くなる環境は十分に揃っているのだ。

今こそ自制が必要な時代はないと、つくづく思う。射幸性のあるものへ近ずくことを禁止するのではなく、身の回りには自制が必要な場面がたくさんあることを大人が教えるべきであり、自ら戒めるべきなのだ。・・・と、ギャンブルと射幸心の関係を殊勝にもチラリと考えたりしたが、そもそも真面目な動機で馬券なんて買ったわけじゃない。しかしそれでも釈然としない、損をしたことだけではない、何かもやもやしたものがいつまで残った。

年を越してからも、それが何故なのかをずっと考えていた。結局のところ、私は馬を見たいのでも、乗りたいのでも、ましてや馬に賭けて大金を得たいのでもなかった。私は馬になりたかったのだ。馬そのものになってターフを思い切り走りたいのだった。叶わぬ願いだが、明日あたり近所の馬頭観音にお参りしてみようと思う。




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Commented by うさじい@山形 at 2018-01-14 11:10 x
馬券は、上山で競馬をやっていた時代に買ったことがありますが、ことごとくハズレ。二度とするものかと強く思い、以来買ったことはありません。パチンコやスロットはだいぶ遅くまでやっていましたが、それもあるときふっと馬鹿らしく思い、それ以来パチンコ屋さんには足を踏み入れておりません。お金と時間をだいぶ費やしました。ばがくさい。今はトトビックをほぼ毎回少額ですが買っています。楽天からカード決済で買うと当たればカードの決済口座に振り込まれます。目指せ六億。万一当ったら、何かごちそうしましょう。
Commented by bunkasaba at 2018-01-14 20:05
>うさじいさん
JRAの基本理念のひとつが、「レースの迫力、馬の美しさ、推理の楽しみが一体となった競馬の魅力を高め、夢と感動を皆様にお届けします。」だそうです。「夢と感動」ではなく、「絶望と散財」の間違いじゃないかと思いました。一旦お金を賭けると、走っているのがブタでも馬でも関係無くなってしまうことがよく分かりました。お金だけ見ると、まさに賭博、博打、ギャンプル。競馬に詳しい人は昔から周りにいましたが、長く続けている人は、数百頭の馬を何代も前から知っていて、賭けても少額とか。そんな境地に達するには、相当高い授業料が必要なんでしょうね。今回、たまたま買い目を教えてもらったのですが、人から教えてもらうのはダメですね。2勝12敗。(笑)
by bunkasaba | 2018-01-12 12:18 | 生活 | Trackback | Comments(2)