(メモ)椅子の研究。
2015年 07月 05日
私 「このオカムラのフィーゴはいくらですか?」
店員「ええっと、在庫を確認して来ましょうか?」
私 「いいですよ。10脚も買いませんから」
自宅から車で約15分離れたリサイクルショップの倉庫には、不要になった椅子や机、コピー機が山と置いてあった。
法人から不用品を回収・整備して販売する店だから、あまり個人客が出入りする場所ではない。
「椅子を見たい」と伝えると、東京の店から手伝いに来ていると言う若い店員が、倉庫の2階に案内してくれた。
金属製の階段を登ると、高圧洗浄されたオフィスチェアが整然と並んでいた。自分が毎日座る会社の椅子より、ずっと丈夫でこ綺麗だ。
× × ×
会社の椅子は、壊れたモノが多い。特に、会議室に多い。
きっと、椅子を投げあったり奪い合ったりするハゲしい会議があるに違いない。会議の後、肩を震わせ机を叩き、椅子を蹴飛ばす輩もいるはずだ。さまざまな人が日に何回も座り、挙げ句の果てに八つ当たりされてしまうのだから、会議室の椅子の痛みの理由も良く分かる。
自分の会社に限らず、ヨソさまの会社でも、椅子の地位は低い。まれに、机も椅子もファシリティ全てに寸分の隙も無い部屋に通されることがあった。ハーブティーなどを出されると、緊張感がいや増すのだが、振り返ってみれば打ち合わせの質も密度も濃く、ああ、やはり仕事には環境も大事だなとつくづく思うのである。
一方、家に帰ると、腰掛けるものはダイニングテーブルに付属する椅子だけ。昨年まで、木の椅子に何の不便も感じなかったが、腰を痛めてからというもの、座って物を書いたりすると、直後にひどく痛み、何日も痛む事が続いた。結局、椅子に座ることを避けるようになり、パソコンに向かう頻度すら落ちてしまった。会社で何時間座っていても平気なのに、家では腰が痛むのである。ここにいたって、まともな椅子を購入すべきなのではないかと、真剣に考えるようになった。
とはいえ、オフィスチェアは、とても高い。
今はどうか知らないが、ストレスが多く、長時間同じ姿勢を強要される部署では、高額な椅子が導入されていた。しかし、これはファシリティ一式をまとめて購入する法人だからできることであって、個人でホイホイ虎の子10枚も20枚も出するわけにはいかない。大体、定価と売価だって、個人購入なんてほとんど想定されずに設定されているに違いない。
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倉庫に並ぶ大量の椅子が、一体どういった経緯でここに来る事になったのか、そして誰が買って行くのか。椅子の流通経路には興味が尽き無い。しかし、それは今日の目的ではない。
家で使える椅子が、安く買えるかどうか、買うに値する物なのかどうかを見に来たのである。
オカムラの最上位モデルであるコンテッサには、54,800円という値段がついていた。新品では、20万円近くするオフィスチェアだ。座ってみたが、残念なことに、その良さが分からなかった。
大量に入荷していたハンガー付きのフィーゴは、20,800円。大手派遣会社が10脚予約済みだった。「あまり使わないでしまってあった物らしいんですが、勿体ないですよね」店員は、そんな事を言った。灰色や黒、青といった椅子の中で、カラフルなその椅子は一際目立っていた。座ってみると、肘掛けはないが、座り心地はまずまずで、硬さがちょうど良い。
リストラの数だけ、世の中に椅子があふれてしまったに違いない。そんなことを考えると、自分の家よりも、会社の自分の椅子用に、これを買ってもらいたい気がした。
いっそこのまま買って帰ろうかとも思ったのだが、椅子を購入しようと思い立ってからまだ日が浅い。オフィスチェア自体の知識に乏しく、ましてやランバーサポートといった機能の有無は、見た目ではまるで判別出来ない。