2024年 07月 11日
スパゲティの年に。
月曜日。帰宅して2階の寝室に上がると、室温は36.5℃だった。
時代はプラザ合意前。円ドルレートは230円前後だった。ロングパスタの価格は国産の1.5倍以上した。高くはあったが、デュラム・セモリナ100%のスパゲティを食べ慣れると、元には戻れないカラダになっていた。
「暑い、寒い、頭が痛い、腰が痛い」を言わないよう誓ったが、もう限界だ。こりゃ熱帯以外の何ものでもない。
「暑い、アツイ、暑すぎる、タスケテー」と叫びながら、近くの書架から「熱帯」というタイトルの本を抜き出した。確か、数年前、物語の展開についていけず、途中で放り出した本だ。
なにげなくページをめくり、そのままサウナ状態の部屋に立ちつくし、10分読書してしまった。
以前この小説を読んだとき、書き出しの一節はフィクションだと思った。のちに作者経歴を見て、奈良在住で国立国会図書館に就職したことが事実だと知った。つまりは小説が書けずに懊悩していた記述はノンフィクションなのだと、今さらながら気がついたのだ。
犬の名前も、小梅なのかもしれない。「誰も最後まで読んだことのない本をめぐる物語」を、結局、私も読み通せていないのだった。…しかし、この部屋は地獄だ。
× × ×
そこで、「スパゲティ」で拙ブログ内を検索してみた。79件もヒットするではないか。ブログに20年も駄文を連ねていると、日記にはならずとも、記憶をたどるよすがにはなり得る。
さらに、震災の前年、15kgを追加で購入している。7-8年前にも15kg注文したはずだから、バリラだけで45kg。
直近は、さすがにカラダに悪いかもしれないと思い控えていたので、10kgぐらいはセガレが食べたのかもしれない。
それ以前にも、「西友で売っていた1kg198円のパスタを買い占めた」などと書いているし、謎のパスタ愛にはあきれるばかりだ。我が生涯、一体、何十kgのデュラム・セモリナとグルテンを摂取したのだろうか。
※もっとも、ロングパスタには意外に多くのタンパク質が含まれている。garofaloのように14%近いものもある。
× × ×
一九七一年、僕は生きるためにスパゲティーを茹でつづけ、スパゲティーを茹でるために生きつづけた。アルミ鍋から立ちのぼる蒸気こそが僕の誇りであり、ソースパンの中でグツグツと音を立てるトマト・ソースこそが僕の希望であった。(「スパゲティーの年に」村上春樹)
「めくらやなぎと眠る女」を10年ぶりに再読し、「スパゲティーの年に」を見つけた。
この短編が収録されたのは「カンガルー日記」で、この本を買ったのは大学2年のときだった。中森明菜が「それはちょっとできない相談ね」と歌っていた太古の昔である。
「ドイツ・シェパードの行水にでも使えそうなアルミ鍋」こそ手に入れなかったが、週に2ー3回、スパゲティを茹でていたので、共感しながら読んだことをよく覚えている。
スパゲティは手早く安くあがり、米を研いで炊飯するより手軽だ。ルールもないし、失敗もない。その頃、スーパーに並ぶ国産のスパゲティは、茹でるとフニャフニャのうどんみたいになったが、それがデファクトスタンダードだと疑いもしなかった。
だが、ある日、輸入品を買って目が覚めた。
茹ですぎても、コシがあるのだ。それ以来、私は近所の雑貨屋で、ブイトーニとかいう輸入品のスパゲティを買って食べるようになった。
国産品の原材料欄から「小麦粉」が消え、「デュラム小麦のセモリナ」だけの表示になったのは、何年も先のことだった。
× × ×
chatGPT4に、「日本のパスタ業界の課題と解決策」について、ディベートさせてみた。
業界人ではないから、これは単なる興味本意である。結論は、たちどころに表示された。すでにスーパーの棚に反映されている内容で、深みがないとも言えるが、素人が10秒で出せる結果でもない。
先日、購入した国産のやや高いロングパスタ(オーマイPREMIUM もちっとおいしいスパゲティ)の原材料欄には、「デュラム小麦のセモリナ(国内製造)、小麦粉」(国産小麦粉は10%以上配合)と記載があった。
30年前なら、絶対買わなかったスパゲティだが、もしかすると、デュラム小麦に匹敵する国産小麦が開発され、パスタ業界の課題に挑戦しているのかもしれない。これは、今夜にでも食べてみる予定だ。
by bunkasaba
| 2024-07-11 07:26
| 食べ物
|
Trackback
|
Comments(0)










